2023年も残すところ二ヶ月半ほどとなりました!
9月の下旬には国税庁HPに「年末調整がわかるページ」、10月の頭には「年末調整チャットボット」が公開されています。
顧問先様には順次年末調整のご案内をしていますが、自社で年末調整をされる企業様も多いことと思います。
そこで、今回は年末調整の手順と躓きやすいポイントについて解説していきます!
1.そもそも年末調整とは?
毎年、年末調整事務をされている経理担当者の方には耳タコかもしれませんが、そもそも年末調整とは何のための手続きなのでしょうか?
年末調整とは、給与から源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続です。
会社から受け取るお給料明細には「源泉所得税」の欄があり、毎月いくらかずつ天引きが行われていると思います(給与の額や扶養人数によっては、0円の場合もあります)。
この天引き額は、あくまで概算です。
本当の所得税額は、12月のお給料の支払い額が確定した後、年間の給与額や負担した社会保険料、扶養控除の額等によって決まります。
この、概算の天引き額と確定した年税額を比較し、天引き額の方が多ければ還付され、年税額の方が多ければ追加で徴収されることになります。
2.年末調整の必要書類
年末調整にあたっては、従業員さん(給与所得者)から複数の書類を回収しなければいけません。
基本的には、以下の三つの書類になります。
・扶養控除等(異動)申告書
・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
・保険料控除申告書
また、この添付書類として、
・前職を年の途中で退職した人→前職の源泉徴収票
・扶養親族が「非居住者」である場合→その親族に係る「親族関係書類」など
・生命保険、地震保険、小規模企業共済等に加入している場合→保険料控除証明書
などが必要になる場合があります。
各書式は国税庁HPよりダウンロードが可能です。添付書類の詳細についても書かれていますので、確認してみてください。
また、住宅ローン控除を受けられる場合には、住宅借入金等特別控除申告書が必要です。
こちらは各個人あてに税務署から送られてきている書類を使用します。
3.年末調整のスケジュール
年末調整ではやることがたくさんあります!
・2で説明した書類を従業員に配布し、記入してもらい、添付書類を集めて提出してもらう。
・それらをとりまとめ、年間の給与額や扶養情報等のデータ入力し、個々人の税額を計算する。
・計算した税額を元に、従業員には所得税の還付・徴収を行い、1月10日(納期の特例の承認を受けている場合には、1月20日)までに納税する。
となると、そろそろ最初のステップである、従業員への書類の配布を始めておかないといけないわけです。
そろそろ、各保険会社からも個人あてに「保険料控除証明書」が発送される頃です。
早めの書類の配布・回収が年末の忙しさを乗り越えるポイントになります。
4.書類提出後に扶養の異動があったんだけど…
「どうすればいいですか?」なんて聞かれることもあるかもしれません。
所得税法では、その年の12月31日時点の状況で控除対象扶養親族などの判定を行うことになっています。なので、11月までお子さんを扶養に入れていても、就職などで12月に扶養が外れた場合、その年の控除対象扶養親族にはならないのです。
まず、年末調整を行う前でしたら、再び扶養控除申告書を提出してもらい、異動後の内容で年末調整をしましょう。
また、年末調整を行った後でも、源泉徴収票を作成・交付する日までであれば、年末調整のやり直しをすることができます。その場合でも、異動後の内容の扶養控除申告書を提出してもらいましょう。
年末調整のやり直しをしない場合、会社ではなく従業員本人が確定申告をすることになります。
5.ダブルワークをしている場合の年末調整
最近は副業をされている方も増えてきましたね。また、アルバイトさんやパートさんなどで、複数の会社に勤めている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ダブルワークをしている場合の年末調整について、パターン別にみていきます。
- 他の会社に勤めている場合(二か所給与)
複数の会社に勤めている場合、年末調整はどこか一社でしか行うことができません。従業員はメインの勤め先一社のみに扶養控除申告書を提出し、その会社で年末調整を行うことになります。
年末調整を行わない会社(サブの勤め先)では、年末調整は行いませんが、源泉徴収票の発行や市町村への給与支払報告書の提出は必要です。源泉徴収票には「年調未済」と記載します。
従業員は一社でしか所得税の清算が完了していないため、各社から発行された源泉徴収票を元に、自身で確定申告を行うこととなります。
- 副業(給与所得以外)がある場合
他の会社に勤めているわけではなく、副業として自身で事業を営んでいる場合には、年末調整は通常通り行います。副業の収入については、①のパターンと同様に、従業員自身が確定申告を行うことになります。
6.ふるさと納税をしている場合、年末調整での手続きは必要?
住所地以外の自治体に寄付を行うことで、税金の控除を受けることができるふるさと納税。年々利用者数が増え、昨年はおよそ890万人が利用しています。
2で説明した年末調整の必要書類の中に、ふるさと納税関連の書類の記載はされていませんでしたね。年末調整では、ふるさと納税の税金控除の手続きができないのです。
では、どのようにして控除を受ければいいのでしょうか?
① 確定申告
個人で確定申告を行うことにより、寄付金控除を受けることができます。添付書類として、ふるさと納税先の自治体から送付された寄附金受領証明書が必要です。
② ワンストップ特例制度の利用
ワンストップ特例制度は、寄付をした自治体に申請書を提出することで、確定申告をしなくても控除が受けられる制度です。
しかし、全員がこの制度を利用できるわけではなく、いくつか条件があります。
・年間で寄付した自治体が5つ以下であること
→年間で6以上の自治体に寄付を行った場合、この制度は利用できません。
・確定申告をする必要のない人であること
→ワンストップ特例制度を利用していても、あとで確定申告をしてしまった場合、確定申告の情報が優先されます。当初確定申告をする予定が無くても、後々扶養の変更や医療費控除を受けるなどの目的で確定申告を行う場合、ふるさと納税の寄付金控除についても必ず一緒に申告するようにしましょう。
・翌年の1月10日までに申請書と必要書類の提出ができること
→令和5年中に寄付を行った場合の申請書の提出期限は令和6年1月10日です。年末ぎりぎりでの寄付になると、申請書の提出が間に合わない場合があります。ふるさと納税は計画的に。