「創業融資を受けるには、同じ業界で何年くらいの経験が必要?」「未経験の業種で創業すると融資は難しい?」
日本政策金融公庫の創業計画書には「経営者の略歴等」という項目があり、これまでの勤務先だけでなく、担当業務や役職、身につけた技能などを記載する形式になっています。
創業前には、その事業についての決算実績がありません。そのため、これまでどのような仕事を経験し、その経験を創業後の事業にどう生かせるのかを説明することは重要です。
今回は、日本政策金融公庫の創業融資を検討している方に向けて、業界経験や実務経験について、創業計画書でどのように整理すればよいのかを解説します。
創業融資では「何年働いたか」だけではなく経験の内容も重要
日本政策金融公庫の創業計画書には、「経営者の略歴等」を記載する欄があります。
公庫の創業計画書でも、勤務先名だけではなく、担当業務や役職、身につけた技能などについても記載するよう案内されています。
つまり、
「飲食店で10年間勤務していました」
だけで終わらせるのではなく、
「飲食店で10年間勤務し、うち3年間は店長として、仕入、原価管理、シフト作成、スタッフ教育、売上管理などを担当していました」
というように、「何を経験してきたのか」まで具体的に整理することが大切です。
【参考】日本政策金融公庫「創業計画書」
業界経験は何年あればいい?
創業融資を検討している方からよく聞かれるのが、「同業種で何年以上の経験があればいいのか」という質問です。
これについて、「○年以上なら融資を受けられる」「○年未満なら融資を受けられない」と単純に判断することはできません。
同じ5年間の勤務経験でも、担当してきた業務の内容は人によって大きく異なります。
例えば、これから飲食店を開業する場合、調理だけを担当していた人と、調理に加えて仕入、原価管理、スタッフ管理、売上管理なども経験していた人では、創業後に生かせる経験の内容が異なります。
経験年数だけを見るのではなく、「その期間に何を経験し、何ができるようになったのか」を整理しておきましょう。
創業する事業とこれまでの経験をつなげて説明する
職歴を書くときに重要なのは、過去の仕事内容を並べるだけではなく、創業する事業とのつながりを考えることです。
例えば美容室を開業するのであれば、カットやカラーなどの技術だけでなく、
- 指名顧客の獲得
- 店舗の売上管理
- 材料の仕入・在庫管理
- スタッフの教育
- 予約管理
- SNSなどを使った集客
といった経験も、創業後の店舗運営につながります。
建設業であれば、現場作業の経験だけでなく、見積作成、原価管理、工程管理、外注先との調整、元請先との関係なども事業を運営するうえで重要な経験になります。
「○年間働いた」という年数だけではなく、その経験を創業後のどの部分に生かせるのかまで説明できるようにしておくと、事業計画も整理しやすくなります。
役職名より「実際に何を担当していたか」を具体的にする
店長、マネージャー、課長などの経験がある場合には、役職名だけを書くのではなく、その立場で実際に何を担当していたのかを整理しましょう。
例えば、
- 月間売上の管理
- 仕入・原価管理
- スタッフの採用・教育
- 勤務シフトの作成
- 新規顧客の獲得
- 取引先との価格交渉
などです。
創業後には、商品やサービスを提供する技術だけでなく、売上管理、人材管理、仕入、集客などさまざまな業務が必要になります。
これまでの経験の中に、創業後の経営に生かせるものがないか振り返ってみましょう。
営業・仕入・集客などの経験も整理する
創業する業種での経験というと、技術や現場経験だけを考えがちですが、それ以外の経験も重要です。
例えば、
- どこから商品・材料を仕入れるのか
- どのくらいの価格で仕入れられるのか
- どのように新規顧客を獲得するのか
- 既存顧客からどの程度の受注が見込めるのか
- どのような販売ルートを利用するのか
といったことが具体的になっていると、売上計画や仕入計画にも根拠を持たせやすくなります。
これまでの勤務先で営業や仕入、顧客管理などを担当していた場合には、その経験も創業計画書に反映させるとよいでしょう。
異業種からの創業なら、これまでの経験をどう生かせるか考える
創業する業種とまったく同じ仕事を経験していなければ、必ず融資を受けられないというわけではありません。
異なる業界で働いてきた場合でも、これまでの経験の中に創業後に生かせるものがあるか整理してみましょう。
例えば、
- 法人営業の経験
- マーケティング・集客の経験
- 経理・財務の経験
- 人材採用・マネジメントの経験
- 店舗運営の経験
- IT・システムに関する経験
などは、業種が変わっても創業後に生かせる場合があります。
同業種での経験が少ない場合には、単に「未経験ですが頑張ります」とするのではなく、これまでの経験をどう生かし、不足している知識や技能をどのように補うのかを具体的に考えておくことが大切です。
自分に不足している経験をどのように補うか
創業者自身にすべての経験や能力が備わっている必要はありません。
不足している部分がある場合には、どのような体制で補うのかを考えます。
例えば、技術面については経験豊富な従業員を採用する、営業面についてはこれまでの人脈を活用する、経理や税務については専門家を利用するなど、事業によってさまざまな方法があります。
ただし、経験豊富なスタッフがいるからといって、代表者本人の経験不足が自動的に補われるというわけではありません。
代表者自身が担当する部分と、他のメンバーに任せる部分を整理し、事業全体をどのような体制で運営するのかを説明できるようにしておきましょう。
創業計画書には経験をできるだけ具体的に書く
創業計画書の「経営者の略歴等」の欄には、勤務先や勤務期間だけでなく、担当業務や役職、身につけた技能などを具体的に記載します。
例えば、
株式会社○○ 飲食店勤務 10年
だけではなく、
株式会社○○ 飲食店勤務 10年
調理・仕入を担当。入社7年目から店長として売上管理、原価管理、スタッフ10名のシフト管理・教育を担当。
というように書けば、これまでどのような業務を経験してきたのかが分かりやすくなります。
実績を数字で説明できる場合には、無理のない範囲で具体的な数字を入れる方法もあります。
ただし、数字を大きく見せることが目的ではありません。面談で説明を求められても、自分自身で具体的に説明できる内容を書くことが大切です。
創業計画書で書ききれない場合は職務経歴書などで補足する
日本政策金融公庫の創業計画書は記入スペースが限られています。
長い職歴がある場合や、複数の会社で創業に関係する経験を積んできた場合には、創業計画書だけでは十分に説明できないこともあります。
そのような場合には、必要に応じて職務経歴書や業務実績をまとめた補足資料を準備する方法もあります。
【元銀行員として】
職務経歴書を付けること自体が目的ではありません。
大切なのは、「何年働いたか」だけではなく、「そこで何を担当し、創業後に何ができるのか」が伝わることです。
創業計画書の限られたスペースだけでは説明しきれない場合には、補足資料を使って簡潔に整理すると伝わりやすくなります。
ただし、資料を増やすことが目的にならないようにしましょう。創業する事業と関係のある経験を中心に整理することがポイントです。
まとめ|経験年数より「創業後にどう生かせるか」を整理する
日本政策金融公庫の創業計画書では、経営者のこれまでの略歴、担当業務、役職、身につけた技能などを記載します。
業界経験について、「○年以上あれば大丈夫」と一律に考えるのではなく、
- どのような業務を経験したのか
- どのような技能・知識を身につけたのか
- 営業・仕入・集客・管理などの経験があるか
- その経験を創業後の事業にどう生かすのか
- 不足している経験をどのように補うのか
という視点で整理してみましょう。
創業計画書は、これまでの職歴を書くためだけの書類ではありません。これまでの経験と、これから始める事業をつなげて説明することが大切です。
創業計画書を作成する際には、「何年経験したか」だけでなく、「その経験が創業後のどの部分に生かせるのか」まで一度整理してみることをおすすめします。









