「日本政策金融公庫から創業融資を受けたけれど、追加でもう少し借りることはできますか?」
創業後、このようなご相談を受けることがあります。
実際に事業を始めてみると、当初の計画にはなかった設備が必要になったり、予想以上に受注が増えて仕入資金が必要になったりすることがあります。
反対に、予定していた売上がなかなか上がらず、運転資金が不足するケースもあります。
では、創業融資を受けた後、追加融資はいつから相談できるのでしょうか。
結論からいうと、「創業融資を受けてから1年間は追加融資を申し込めない」という決まりがあるわけではありません。
重要なのは経過した期間だけではなく、「なぜ追加の資金が必要になったのか」「その資金を何に使うのか」「追加で借りても返済できるのか」を説明できることです。
今回は、創業融資後の追加融資について、元銀行員の税理士という立場から解説します。
創業融資から1年経たなくても追加融資は相談できる
創業融資を受けてから半年程度しか経過していなくても、追加融資について金融機関へ相談すること自体は可能です。
「1期目の決算が終わらなければ、追加融資について相談できない」というものではありません。
例えば、創業後に次のような状況になることがあります。
- 予想以上に受注が増えて仕入資金が必要になった
- 売上増加に対応するため設備を追加する必要が出てきた
- 従業員を予定より早く採用することになった
- 売上の入金まで時間がかかり、運転資金が必要になった
- 新しい店舗や事業所を出すことになった
このように、事業が動き始めた結果として新たな資金需要が発生することはあります。
そのため、「創業から何か月経過したか」だけで追加融資の可否が決まるわけではありません。
重要なのは「なぜ追加資金が必要になったのか」
追加融資を相談するときに重要になるのが、追加資金が必要になった理由です。
例えば、次の2つでは意味が大きく異なります。
ケース1 売上が予想以上に伸びて資金が必要になった
創業時には月商200万円を予定していたものの、実際には月商300万円まで増加したとします。
売上が増えれば、業種によっては仕入代金や外注費、人件費なども増加します。
しかも、売上代金を回収するより先に仕入代金や給与を支払わなければならない事業では、売上が増えているのに手元資金が不足することがあります。
この場合は、
- 売上がどの程度増えているのか
- なぜ運転資金が増えるのか
- 追加資金を何に使うのか
- 今後の売上・利益をどう見込んでいるのか
などを数字で説明できるようにしておくことが重要です。
ケース2 予定より売上が少なく資金が足りなくなった
一方、創業時の計画では月商200万円を見込んでいたものの、実際には月商100万円程度しかないため、運転資金が不足しているケースもあります。
この場合も追加融資について相談することはできますが、単に「お金が足りなくなったので貸してほしい」という説明だけでは不十分です。
例えば、
- なぜ売上が計画を下回ったのか
- 今後どのように売上を改善するのか
- 削減できる経費はないか
- 追加融資を受けた後、資金が再び不足しないか
- 既存借入と追加借入を合わせても返済できるのか
といった点を整理する必要があります。
追加融資は「不足した資金を補充すれば終わり」ではなく、その後の事業が成り立つかどうかまで考えることが重要です。
創業時の事業計画との「答え合わせ」が重要
創業融資の審査時点では、まだ事業を始めていないため、売上や利益の多くは将来予測です。
例えば創業計画書に、
- 月商300万円
- 仕入100万円
- 人件費80万円
- 家賃30万円
と記載していたとしても、創業前の段階ではあくまで計画です。
ところが創業後は、実際の数字が出てきます。
追加融資を相談するときには、創業時に作った計画と実際の数字を比較することが重要になります。
例えば、
- 計画していた売上に対して実績はいくらか
- 粗利益率は計画どおりか
- 人件費や家賃などの固定費は想定どおりか
- 当初予定していなかった支出は何か
- 手元資金はどのように推移しているか
を確認します。
計画と実績に差があること自体が問題なのではありません。
「なぜ差が生じたのか」を説明し、その差を踏まえて今後の計画を作り直せるかどうかが重要です。
1期目の決算が終わると説明できる材料が増える
追加融資に「1期目の決算が終わっていること」が必須というわけではありません。
ただし、1期目の決算が終わると、創業時とは違った材料をもとに事業の状況を説明できるようになります。
例えば、
- 実際の年間売上
- 粗利益
- 営業利益
- 借入金残高
- 預金残高
- 実際の資金繰り
- これまでの返済状況
などです。
創業時は「これからこのくらい売れる予定です」という計画を中心に説明していたものが、決算後は「実際に1年間事業を行った結果、こうなりました」と実績をもとに説明できます。
つまり、1期目の決算は、創業時に作った事業計画の「答え合わせ」をする一つのタイミングと考えることができます。
決算前に追加融資を相談する場合は試算表を確認する
まだ1期目の決算を迎えていない場合でも、現在の事業状況を確認することはできます。
その際に重要になるのが、会計帳簿や試算表です。
例えば、創業から6か月経過しているのであれば、
- 6か月間の売上
- 粗利益
- 経費
- 利益
- 預金残高
- 借入金残高
- 売掛金・買掛金
などを確認します。
創業直後だからといって「まだ決算書がないので数字は分かりません」ではなく、現在までの実績を把握できるように日頃から会計帳簿を整えておくことが大切です。
追加融資を相談する前に確認したい5つの数字
追加融資を検討するときは、少なくとも次の5つは確認しておきたいところです。
- 現在の月商はいくらか
- 毎月の固定費はいくらか
- 現在の預金残高はいくらか
- 既存借入の毎月返済額はいくらか
- 追加でいくら必要なのか
特に重要なのが5番目の「追加でいくら必要なのか」です。
「念のため500万円借りたい」というのではなく、
- 設備購入に200万円
- 仕入資金に150万円
- 人件費などの運転資金に150万円
というように、必要額を積み上げて考えます。
借りられる金額を考える前に、必要な金額を計算する。
これは創業時の融資でも、追加融資でも同じです。
【元銀行員の税理士からのコメント】
追加融資の相談で重要なのは、「創業から何か月経過したか」だけではありません。
金融機関に説明するためにも、まず経営者自身が「なぜ当初の資金では足りなくなったのか」を把握する必要があります。
売上が予想以上に増えた結果なのか、設備投資が必要になったのか、それとも売上が計画を下回って運転資金が不足しているのか。
原因によって、必要な資金の金額も、その後の事業計画も変わります。
追加融資を申し込むこと自体を目的にするのではなく、追加資金を入れることで、その後の事業と資金繰りがどうなるのかまで考えることが大切です。
資金がなくなる直前まで待たない
追加融資を検討する場合、手元資金がほとんどなくなってから初めて相談するのではなく、資金繰りを確認しながら早めに対応を検討することが重要です。
例えば、今後数か月の売上入金、仕入代金、人件費、家賃、税金、借入金返済などを並べてみると、いつ頃資金が不足しそうなのかを把握できます。
その段階で、
- 経費を見直す
- 設備投資の時期を変更する
- 売掛金の回収条件を見直す
- 追加融資を相談する
など、複数の対応策を検討できます。
創業時だけでなく、創業後も資金繰り表を作り、数か月先までの預金残高を確認しておくとよいでしょう。
まとめ|追加融資は「1年経過」より資金が必要な理由が重要
創業融資を受けた後、追加融資を相談するために「必ず1年間待たなければならない」というものではありません。
創業から間もない時期でも、新たな資金需要が発生すれば追加融資について相談することはできます。
ただし、その際には、
- なぜ追加資金が必要になったのか
- 何に使うのか
- いくら必要なのか
- 現在の売上・利益はどうなっているのか
- 追加で借りても返済できるのか
を整理しておくことが重要です。
また、1期目の決算が終われば、創業時の計画と実際の業績を比較できるようになります。
創業融資は「借りたら終わり」ではありません。創業後の実績と資金繰りを確認しながら、次に必要となる資金を早めに考えていくことが大切です。
当事務所では、創業融資の申込みだけでなく、創業後の会計・決算・資金繰りや追加融資についてもご相談いただけます。









