相続した実家や空き家を売却することになった場合、気になるのが「税金はいくらかかるのか」という点です。
不動産を売却して利益が出れば、原則として譲渡所得に対して所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。
ただし、相続した実家について一定の要件を満たす場合には、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除」を利用できることがあります。
令和6年(2024年)から制度の一部が改正され、売却後に一定期限までに耐震改修や取壊しを行うケースも対象となるなど、以前より使いやすくなった部分があります。
一方で、建築時期、相続後の利用状況、売却時期、売却金額など細かな要件があります。
【出典】国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
相続した実家を売却すると、どのように税金を計算する?
相続した不動産を売却した場合の譲渡所得は、基本的に次のように計算します。
売却代金 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除 = 課税譲渡所得
相続した不動産の場合、相続したときの相続税評価額を取得費にするわけではありません。
原則として、亡くなった方(被相続人)がその不動産を取得したときの取得費を引き継ぎます。
そのため、何十年も前に購入した実家では、当時の売買契約書などが残っているかどうかが重要になることがあります。
取得費が分からなければ、すぐ売却価格の5%?
古い実家では、「購入したときの契約書が見つからない」というケースも珍しくありません。
取得費が分からない場合などには、売却代金の5%を概算取得費として計算する方法があります。
ただし、契約書がないからといって、最初から5%で計算するしかないわけではありません。
古い資料、預金の記録、住宅ローン関係書類など、取得費を確認できる資料が残っていないかを調べることが重要です。
相続した実家の所有期間はいつから数える?
相続した不動産については、原則として被相続人の取得時期を引き継ぎます。
例えば、父が30年前に購入した実家を子が相続し、その翌年に売却した場合でも、子が1年間しか所有していないから短期譲渡になるわけではありません。
父の取得時期を引き継いで所有期間を判定します。
相続した空き家には「3,000万円特別控除」がある
相続した実家を売却するときに確認したいのが、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」です。
一定の要件を満たす相続した実家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
例えば、特例適用前の譲渡所得が2,500万円であれば、要件を満たして3,000万円特別控除を適用することで、課税譲渡所得が0円になる場合があります。
ただし、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡について、対象となる家屋と敷地等を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上いる場合には、特別控除額の上限は1人あたり2,000万円となります。
【出典】国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
どんな実家でも3,000万円控除を使えるわけではない
この特例には細かな要件があります。
代表的なものとして、次のような条件があります。
- 原則として昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物ではないこと
- 原則として相続開始直前まで被相続人が居住していたこと
- 一定の場合を除き、相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと
- 相続後、一定の事業・貸付け・居住の用に使用されていないこと
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却代金が1億円以下であること
- 親子や夫婦など一定の特別関係者への売却ではないこと
このほかにも要件がありますので、実際の適用にあたっては個別に確認する必要があります。
【出典】国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
老人ホームに入所していた場合は?
「亡くなる直前は老人ホームに入所していたので、実家に住んでいなかった」というケースもあります。
この場合でも、直ちに特例の対象外になるわけではありません。
被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合には、一定の要件を満たすことで、入所前に住んでいた家屋がこの特例の対象となることがあります。
例えば、老人ホーム等への入所後も家屋が被相続人の物品の保管などに使用され、事業・賃貸や他の人の居住に使用されていなかったことなどが要件となります。
【出典】国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」
2024年から「売却後の解体」でも対象になる場合があります
令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡について、この特例は一部改正されています。
改正前は、耐震基準を満たしていない家屋について、原則として売却前に耐震改修または取壊しを行う必要がありました。
現在は一定の要件を満たせば、家屋を売却した後、その譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震基準を満たすこととなった場合、または家屋の全部を取り壊した場合にも特例を適用できることがあります。
つまり、「古い家が残った状態で売却したから、この特例は絶対に使えない」とは限らなくなっています。
ただし、期限や必要書類がありますので、売買契約を締結する段階から特例の要件を確認しておくことが重要です。
【出典】国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
売却期限にも注意
この特例には売却期限があります。
相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
単純に「相続から3年以内」と覚えてしまうと、正確な期限を誤る可能性があります。
相続した実家について「もう少し高く売れるまで待とう」と考えている間に、この特例の期限を過ぎてしまうことも考えられます。
売却価格だけではなく、特例を使った場合の税引後の手取り額まで比較して判断することが重要です。
相続税を払っている場合は「取得費加算」との比較も
相続税を納付した方が相続した不動産を一定期間内に売却した場合には、相続税の一部を取得費に加算できる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を利用できることがあります。
ただし、同じ不動産の譲渡について、相続空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例を重ねて適用することはできません。
そのため、両方の可能性がある場合には、どちらを利用する方が有利なのかを比較する必要があります。
特例を使うには確定申告が必要
相続空き家の3,000万円特別控除は、自動的に適用される制度ではありません。
特例の適用を受けるためには、確定申告を行い、譲渡所得の内訳書や一定の書類を添付する必要があります。
また、売却した不動産の所在地を管轄する市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける必要があります。
売却後に初めて確認するのではなく、売却前から必要書類や特例の要件を確認しておく方が安全です。
【出典】国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
【税理士からのコメント】
相続した実家を売却するときは、「相続税の申告」と「売却時の譲渡所得税」を別々に考えないことが重要です。
誰が実家を相続するのかによって、その後の売却や利用できる特例に影響することがあります。
また、相続空き家の3,000万円特別控除には売却期限があるため、相続後に実家を売却する可能性がある場合には、遺産分割の段階から売却までを見据えて検討しておくことが大切です。
「誰が相続するか」「売却するか保有するか」「売却した場合にどの特例を使えるか」まで一連で考えることが、不動産を含む相続では重要です。
まとめ
相続した実家や空き家を売却して利益が出た場合には、原則として譲渡所得に対して税金がかかります。
ただし、一定の要件を満たす場合には、相続空き家の3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。
特に確認したいのは、
- 建物がいつ建築されたのか
- 被相続人がどのように利用していたのか
- 老人ホーム等に入所していなかったか
- 相続後に賃貸や居住などに利用していないか
- 相続人が何人取得したのか
- いつまでに売却する必要があるのか
- 売却前・売却後のどちらで解体するのか
- 取得費加算など他の特例との関係
といった点です。
相続した不動産は、相続税の申告だけで終わりではありません。
相続後に売却する可能性がある場合には、売却時の税金まで含めて検討しておくことが重要です。
参考資料・出典
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(3,000万円特別控除の要件、2024年改正、相続人3人以上の場合の2,000万円上限、売却後の耐震改修・取壊し、必要書類等)
- 国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」(老人ホーム等に入所していた場合の適用要件)
当事務所では、相続税申告だけでなく、相続した不動産を売却する場合の譲渡所得税についてもご相談いただけます。









