「日本政策金融公庫の創業融資では何を確認される?」「申し込み前に何を準備すればいい?」
創業時の資金調達で、日本政策金融公庫の創業融資を検討する方は多いと思います。
創業前は、すでに事業を行っている会社のような過去の決算実績がありません。
そのため、これまでの経験、創業計画、必要な資金、資金調達方法などを整理し、「どのような事業を、どのような計画で始めるのか」を説明できるようにしておくことが重要です。
今回は、日本政策金融公庫の創業融資を申し込む前に確認しておきたいポイントを、6つに分けて解説します。
【元銀行員として】
創業融資は、一つの項目だけを切り離して考えないことが大切です。
自己資金、これまでの経験、売上計画、必要資金、借入額などはすべてつながっています。個別の数字だけではなく、創業計画全体に無理や矛盾がないかという視点で準備してみてください。
① 自己資金|「何割あるか」だけで考えない
創業融資を検討するとき、多くの方が気にするのが自己資金です。
「創業資金の2割必要」「3割あれば大丈夫」といった情報を見かけることがありますが、日本政策金融公庫が一律に「自己資金○割以上なら融資可能」という基準を示しているわけではありません。
自己資金については、単に現在の預金残高だけを見るのではなく、必要な創業資金はいくらなのか、そのうちいくらを自己資金で準備し、いくらを借入で調達するのかという資金計画全体で考えることが大切です。
また、自己資金として説明する資金については、その出所や形成経緯を説明できるようにしておきましょう。
【元銀行員として】
融資の申込直前に一時的に第三者からお金を借り、預金残高を多く見せるような、いわゆる「見せ金」はやめましょう。
大切なのは残高を大きく見せることではなく、「このお金をどのように準備したのか」を説明できることです。
自己資金については、金額の考え方、親からの援助、タンス預金なども含めて別の記事で詳しく解説しています。
② 業界経験・実務経験|「何年」より「何をしてきたか」
日本政策金融公庫の創業計画書には「経営者の略歴等」という項目があり、勤務先だけでなく、担当業務や役職、身につけた技能などを記載します。
例えば「飲食店で10年間勤務」というだけでなく、調理、仕入、原価管理、スタッフ教育、売上管理など、その期間に何を経験してきたのかを具体的に整理しておきましょう。
異業種から創業する場合でも、これまでの営業、経理、マネジメント、マーケティングなどの経験を創業後に生かせることがあります。
【元銀行員として】
「○年間働きました」という年数だけではなく、「その経験を創業後のどこに生かせるのか」まで考えてみてください。
同業種での経験が少ない場合には、不足している経験をどのような体制で補うのかについても整理しておくと、創業計画全体が分かりやすくなります。
業界経験については、経験年数や職務経歴書の使い方などを別の記事で詳しく解説しています。
③ 創業計画書|数字の「根拠」を説明できるようにする
創業計画書では、創業の動機、これまでの経歴、商品・サービス、取引先、必要資金、売上・経費の見込みなどを整理します。
特に悩みやすいのが、創業後の売上予測です。
まだ事業を始めていないため、過去の売上実績を使うことはできません。そのため、単に「月100万円くらい売れると思う」とするのではなく、なぜその数字になるのかを説明できるようにします。
例えば飲食店であれば、
客単価 × 座席数 × 回転数 × 営業日数 = 売上高
といった方法で計算できます。
【元銀行員として】
売上計画は、できるだけ「数字」に分解して考えてみましょう。
客単価、来客数、契約件数、取引先数、営業日数などに分解すると、売上予測の根拠だけでなく、創業後に何をすれば売上目標を達成できるのかも見えやすくなります。
創業計画書の作り方については、売上予測や経費、必要資金なども含めて別の記事で詳しく解説しています。
④ 資金使途|借りたお金を何に使うのか
創業融資では、「いくら借りたいか」だけでなく、「そのお金を何に使うのか」を整理しておく必要があります。
創業時の資金は、大きく設備資金と運転資金に分けて考えます。
設備資金であれば、店舗内装、機械、車両など、運転資金であれば、仕入、人件費、家賃などが考えられます。
設備資金を申し込む場合には、見積書など金額の根拠となる資料を準備します。
【元銀行員として】
資金使途は、めっちゃ大事です。
「500万円借りたいから500万円の使い道を考える」のではなく、必要な設備や運転資金を積み上げた結果として、必要な借入額を考えてください。
設備を購入するのであれば、見積書などを準備して、金額の根拠を説明できるようにしておきましょう。
設備資金と運転資金の違いや、運転資金をどのように考えるかについては別の記事で詳しく解説しています。
⑤ 信用情報・借入状況|現在の状況を整理しておく
創業融資では、事業の計画だけでなく、申込者の現在の借入状況などについても確認されます。
住宅ローン、自動車ローン、カードローンなどの借入がある場合には、現在の残高や毎月の返済額を整理しておきましょう。
日本政策金融公庫の申込時の同意事項では、信用情報機関の情報を利用することについても記載されています。
過去の信用情報について不安がある場合には、申込前に自分自身の信用情報を確認する方法もあります。
【元銀行員として】
借入があることだけで「融資を受けられない」と考える必要はありません。
大切なのは、現在どのような借入があり、毎月いくら返済しているのかを自分自身で把握しておくことです。
聞かれたときに正確に説明できるよう、事前に整理しておきましょう。
信用情報や過去の返済履歴については、別の記事で詳しく解説しています。
⑥ 面談|創業計画を自分の言葉で説明する
日本政策金融公庫では、融資の申込後に面談が行われることがあります。
面談では、資金の使いみちや事業の計画などについて確認されます。
創業計画書を提出しているからといって、書類を提出して終わりではありません。
例えば、
- なぜこの事業を始めるのか
- これまでの経験をどう生かすのか
- どのように顧客を獲得するのか
- 売上予測の根拠は何か
- 借りた資金を何に使うのか
といったことを、自分自身で説明できるようにしておきましょう。
【元銀行員として】
面談だからといって、必要以上に身構える必要はありません。
創業計画書に書いた文章を丸暗記するより、「なぜこの事業を始めるのか」「どうやって売上を作るのか」「借りたお金を何に使うのか」を自分の言葉で説明できるようにしておくことが大切です。
日本政策金融公庫の面談で聞かれやすい内容や準備については、別の記事で詳しく解説しています。
6つのポイントはそれぞれつながっている
ここまで6つのポイントを紹介しましたが、それぞれを別々に考えないことが重要です。
例えば、飲食店を開業する場合、これまでの飲食店勤務の経験が創業計画につながり、その経験をもとに売上予測や仕入計画を作ります。
その計画から必要な設備や運転資金を計算し、自己資金と借入金を組み合わせて資金調達方法を考えます。
そして、創業計画書にまとめた内容を面談で説明します。
つまり、
経験 → 事業計画 → 必要資金 → 資金調達 → 創業後の資金繰り
という流れで考えると、創業計画全体を整理しやすくなります。
まとめ|創業融資は一つの項目だけで考えない
日本政策金融公庫の創業融資を検討するときには、次の6つのポイントを整理しておきましょう。
- 自己資金
- 業界経験・実務経験
- 創業計画書
- 資金使途
- 信用情報・借入状況
- 面談
重要なのは、「自己資金が○割あるから大丈夫」「業界経験が長いから大丈夫」と一つの要素だけで考えないことです。
これまでの経験、売上計画、必要資金、自己資金、借入額などが一つの創業計画としてつながっているかを確認してみてください。
各項目については、それぞれ詳しく解説した記事もありますので、創業融資を検討されている方はあわせてご覧ください。









