「日本政策金融公庫から借りたお金は何に使ってもいいの?」「設備資金と運転資金の違いがよく分からない」「見積書はどこまで準備すればいい?」
創業融資を申し込む際には、必要な金額だけでなく、「何に・いくら使うのか」を具体的に整理する必要があります。
日本政策金融公庫の創業計画書にも「必要な資金と調達方法」という項目があり、設備資金と運転資金に分けて必要額を記載する形式になっています。
今回は、日本政策金融公庫の創業融資を検討している方に向けて、設備資金と運転資金の違い、金額の考え方、見積書などの準備について解説します。
創業融資では「何にいくら必要なのか」を整理する
創業融資では、「とりあえず500万円借りておきたい」という考え方ではなく、事業を始めるために何が必要なのかを一つずつ積み上げていくことが重要です。
例えば飲食店を開業するのであれば、
- 店舗の保証金
- 内装工事費
- 厨房設備
- テーブルや椅子などの備品
- 開業時の仕入
- 従業員の給与
- 店舗家賃
- 広告宣伝費
など、開業前から開業後にかけて必要となる資金を整理します。
そのうえで、それぞれを「設備資金」と「運転資金」に分けて創業計画書に記載していきます。
日本政策金融公庫が公表している創業計画書の記入例でも、設備資金と運転資金について具体的な内訳を記載し、必要な資金と調達方法を対応させる形式になっています。
設備資金とは?
設備資金とは、事業を始めるために必要となる店舗、機械、車両、備品などの設備に使用する資金です。
業種によって異なりますが、例えば次のようなものが考えられます。
- 店舗・事務所の保証金
- 店舗の内装工事・設備工事
- 厨房機器
- 機械・工具
- 事業用車両
- パソコンや業務用機器
- 店舗什器やオフィス家具
設備資金を申し込む場合には、原則として見積書など、金額を確認できる資料を準備します。
例えば「内装工事200万円」と記載するのであれば、実際に施工業者から見積書を取得しておくことで、その200万円がどのように算出されたのか説明しやすくなります。
【ポイント】
設備資金は、「だいたいこれくらいかかるだろう」という概算だけで計画するのではなく、できるだけ実際の見積書などをもとに金額を積み上げていきましょう。
運転資金とは?
運転資金とは、事業を継続していくために必要となる日常的な支払いに充てる資金です。
例えば次のような支出が考えられます。
- 商品・原材料などの仕入代金
- 従業員の給与
- 店舗・事務所の家賃
- 広告宣伝費
- 水道光熱費
- 通信費
- 外注費
設備資金と違って、運転資金は見積書だけで金額を決められないものも多くあります。
そのため、「開業後、毎月いくら支出するのか」「売上代金が入金されるまでに、どれくらいの資金が必要なのか」を考えて必要額を積み上げることが重要です。
運転資金は「○か月分」と決まっているわけではない
創業融資について、「運転資金は2か月分まで」「3か月分なら融資を受けられる」といった説明を見かけることがあります。
しかし、必要となる運転資金は業種や事業モデルによって異なります。
例えば、現金商売で売上代金がすぐに入ってくる飲食店と、取引先への請求から入金まで2か月かかる事業では、必要となる運転資金は同じではありません。
また、開業当初から従業員を雇用する事業と、一人で始める事業でも必要資金は変わります。
大切なのは「何か月分なら融資を受けられるか」ではなく、自分の事業ではなぜその金額の運転資金が必要なのかを説明できることです。
運転資金は売上の入金時期まで考えて計算する
運転資金を考える際には、毎月の経費だけでなく、売上代金が実際に入金されるタイミングも重要です。
例えば、開業初月から100万円の売上が発生したとしても、その100万円が翌月末や翌々月末に入金されるのであれば、それまでの家賃、給与、仕入代金などは手元資金で支払う必要があります。
創業直後は売上が計画どおりに伸びない可能性もあります。
そのため、売上計画だけでなく、「いつお金が入ってきて、いつお金が出ていくのか」という資金繰りの視点から運転資金を考えることが大切です。
【元銀行員として】
創業計画を見るとき、売上や利益だけでなく「資金がいつ入って、いつ出ていくのか」という視点は非常に重要です。
利益が出る計画であっても、売上代金が入金される前に仕入や給与の支払いが来れば、手元資金が不足することがあります。
創業時には、損益計画とあわせて資金繰りも考えておきましょう。
資金使途を説明するために準備しておきたい資料
必要な資金を計算したら、その金額の根拠となる資料を準備します。
設備資金の場合
- 内装工事や設備工事の見積書
- 機械・厨房機器などの見積書
- 車両の見積書
- 店舗・事務所の物件資料や賃貸借契約に関する資料
運転資金の場合
- 仕入先からの見積書や価格表
- 従業員を雇用する場合の人件費計画
- 店舗・事務所の家賃が分かる資料
- 広告費などの見積書
- 毎月の収支計画や資金繰りの計算資料
すべての運転資金について見積書が存在するわけではありません。
見積書がない支出については、創業計画書の数字と整合するように計算根拠を整理しておくことが大切です。
日本政策金融公庫も、設備資金を申し込む場合には見積書などの提出を案内しています。
【参考】日本政策金融公庫「創業支援」
必要な資金と調達方法の金額を合わせる
創業計画書では、「必要な資金」と「調達の方法」をセットで考えます。
例えば、開業に800万円必要であれば、その800万円をどのように準備するのかを整理します。
【例】開業に800万円必要な場合
- 設備資金:400万円
- 運転資金:400万円
必要資金合計:800万円
これに対して、
- 自己資金:300万円
- 日本政策金融公庫からの借入:500万円
調達額合計:800万円
このように、「何に800万円必要なのか」と「その800万円をどう調達するのか」を対応させて考えます。
自己資金と借入希望額を先に決めて数字を合わせるのではなく、まず必要資金を積み上げ、そのうえで調達方法を考える方が自然な創業計画になります。
融資を受けた後も資金の使い道が分かる資料を残しておく
設備資金として融資を受けた場合には、申込時に説明した設備や工事などに資金を使用することが基本です。
設備を購入したり工事代金を支払ったりした場合には、契約書、請求書、領収書、振込記録など、実際に何に資金を使ったのか分かる資料を保管しておきましょう。
【元銀行員として】
融資を受けることがゴールではありません。
事業を続けていれば、設備の追加購入や店舗拡大などで、再び金融機関から資金を借りることもあります。
その際、前回借りた資金を何に使い、その投資が現在の事業にどうつながっているのかを説明できることは重要です。
設備資金として融資を受けた場合には、申込時の目的に沿って使用し、支払いを確認できる資料をきちんと残しておきましょう。
まとめ|借入希望額から考えるのではなく必要資金を積み上げる
日本政策金融公庫の創業融資を検討する際には、「いくら借りられるか」から考えるのではなく、まず事業を始めるために必要な資金を具体的に積み上げることが重要です。
設備資金については見積書などを準備し、運転資金については毎月の支出や売上の入金時期をもとに必要額を計算します。
そのうえで、自己資金と借入金をどのように組み合わせて必要資金を調達するのかを考えます。
「何に・いくら必要なのか」「なぜその金額なのか」を説明できる創業計画にしておくことが大切です。
創業融資を申し込む前に、設備資金と運転資金の内訳、見積書、自己資金、借入希望額を一度整理しておきましょう。









